ここには、俺が旅の道中に「風神の墓標」主人公の村娘、ウラルに語ったおとぎ話や伝説、笑い話のたぐいを集めてある。 語り部に俺をご指名、ということは獣くさい話ばっかりになるが、そのあたりは勘弁願いたい。 この外見の通り、俺は狩人ということになっているし、森で暮らしているんで街人のおとぎ話はよく知らないんだ。
さてと、じゃあどれから読んでも大丈夫な構成になっているから適当に、と言いたいところなんだが、 だが、ちょいと特殊な話がからんでくるんで、予備知識がちょっとないと厳しい部分があるんでな。少し説明を加えさせてくれ。
ああ、ちなみに目次の並びは時系列順になっている。いつ誰が作ったんだか、舞台になっている年代がわからんものも多いから多少適当になっている部分もあるんだがな。わかっている部分はちゃんとその順にしている。
どれから読んでも大丈夫ではあるんだが、続き物になっている物語もあるし、上から順に読んでいくとわかりやすいはずだ。
【国の形】
俺の国は、リーグ国とコーリラ国という二つの国のある大きな島だ。俺はリーグ人だから、リーグの伝説を中心に話すことになる。
この巨大な俺たちの島の周りには果てない海が広がり、最後には滝となって奈落へ落ちてゆくと思われていたんだが、
つい最近、どうやら海の果てにはベンベルという巨大な国があるらしいことがわかった。
まぁ、俺の話には、このベンベル国は関係ない。見つかったのが本当に最近でな、昔から伝わっている伝承には登場しようがないというわけだ。
【宗教】
この世界を創りたもうたのは、地神、火神、風神、水神の四大神だ。うち風神だけが女神、ほかの三神は男神だな。
俺は森の番人として森で暮らしているから地神をあがめているが、騎士や鍛冶屋なら火神、女や病人なら風神、旅人や芸術に関わる者は水神を主に信望している。
神殿では最も信望する神の像から時計回りに、すべての像に跪礼するのが一般的だな。べつに一神だけに仕えるわけじゃない。誰を最も信望しているか、というだけなんだ。
【森・山・砂漠・平原……の守護者】
四大神がこの世界を創造された時、それぞれの神はそれぞれの掟を創られた。
そして掟を守るべく地神に作り出された獣たち、それが「守護者」だ。水神が作り出した海・川・沼・湖の守護者もいる。
俺の話にはやたらと登場するから覚悟しておいてくれよ。
とりあえず今は「それぞれの領地のどこかにある〈聖域〉を守る、人に化ける力を持つ獣」と覚えていてもらえれば大丈夫だろう。
不安なようなら「ネズミの知恵」を先に読んでくれ。冒頭に少し説明を入れてある。
【特殊動物】
〈アプス〉
目の合った者を眠らせる魔眼の力を持った大蛇だ。今はもう絶滅してしまったんだがな。「魔眼の大蛇」に登場している。
〈イッペルス〉
シカの頭と肢、馬の体とタテガミと尾を持つ大きな草食獣だ。馬よりずっとでかいぞ。雄は巨大なツノが自慢で、秋になると雌をめぐって戦うな。「エレーン」「イッペルスは春を呼ぶ」「出まかせおとぎ」なんかに登場している。
〈ムール〉
巨大な海鳥で、人を背中に乗せて飛ぶことができる。でかさは、そうだな、翼を広げれば二階建ての家がすっぽり隠れるくらいだ。「巨鳥と絵描き」に登場しているぞ。
〈ロク〉
ムールより一回り大きい猛禽なんだが、ムールと違って海鳥じゃなく、山の鳥だ。タカをでかくした感じだな。高い山の断崖絶壁に巣を作る。ムールと同じように人を乗せて飛ぶことができるんだが、ムールよりずっと獰猛だ。「ヴァーノンの一族」「銀翼のボウロ」に登場している。
【語り手・アラーハについて】
AGE : 外見年齢40歳代。本当の歳は数えていない、といつもはぐらかしている。
FEATURE : 身長200cm、体重100kg強の大男。でも足の長い均整の取れた体つきでデクノボウの印象はない。
JOB : 狩人の格好をしているけれど、本当に狩人なのかは不明。ワナをしかけているところも獲物を狩っているところも誰も見たことがないそうな。ただ、食べられる草や木の実、薬草なんかにはとても詳しい。
ETC : 「風神の墓標」本編では全編通しての重要登場人物。